なぜ、放置自動車を「譲ってほしい」という声にお応えできないのか?
――現場の修羅場から学んだ、当社の「譲れないルール」
「この車、普通に売れば50万円は下らないのに。もったいない……」
放置自動車の現場に立つと、私たちもそう思うことが少なくありません。実際、数ヶ月に一度は、全く関係のない第三者の方から「あの車、どうせ捨てるなら譲ってほしい」「部品だけでも売ってくれないか」というご相談のお電話をいただくことがあります。
実は、そうしたお電話のきっかけの多くは、私たちが現場で車両に貼り付ける「警告書」です。
当社では放置車両に対し、所有者に撤去を促す警告書を貼付しますが、そこには当社の連絡先電話番号を明記しています。これは、所有者の方が「何らかの事情で動かせなくて困っている」場合に、解決のための相談に乗れるようにするためです。
しかし、その番号を見た第三者の方から「譲ってほしい」という連絡が入ることがあります。お気持ちは痛いほど分かりますが、当社ではこれらのお申し出をすべて、例外なくお断りしています。
そこには、単なる手続きの都合ではない、依頼者様を守るための「3つの理由」があります。
1. 「300万円入っていた」という言いがかりとの戦い
かつて、撤去した直後の放置車両の所有者関係者を名乗る人物から「車の中に現金300万円があったはずだ。どこへやった」という激しい主張を受けたことがあります。
もちろん、そんな大金は残されていません。しかし、もし「誰かに譲る」「中身を適当に処分する」といった不透明な工程が一つでもあると、こうした悪意ある言いがかりに対し、依頼者様(土地所有者様)の潔白を証明できなくなります。
だからこそ、当社は解体業者に引き渡す前に、車内の荷物や状態を細部まで写真に収め、徹底した証拠保全を行います。「透明性」こそが、トラブルからお客様を守る唯一の武器なのです。
2. 「犯罪の証拠」が眠っているリスク
放置自動車は、時に重大な犯罪に関わっていることがあります。私たちは過去に、解体作業の直前で車内から不審な粉末と注射器を発見したことがあります。
直ちに地元警察へ連絡し、麻薬捜査専門の担当者による現場検証が行われました。真夏、汗だくになりながらも、自分たちの指紋やDNAを付着させないよう全身防護服に身を包み、数時間に及ぶ警察の捜査に立ち会いました。
「面倒なことには関わりたくない」と、これらを見なかったことにして解体を進めてしまう業者もいるかもしれません。しかし、当社は違います。警察への最大限の協力こそが、巡り巡って依頼者様(土地所有者様)を法的なトラブルから守る唯一の道だと確信しているからです。
また、当社が保管している車両が「詐欺事件に使われた可能性がある」と警察から照会が入ることもあります。その際も、証拠を保全し、捜査に全面的に協力する体制を整えています。こうした「刑事事件」のリスクまで想定すると、安易に第三者に車を譲ることは、絶対に許されないことなのです。
3. 「高値」よりも「誠実さ」で選ぶ、全国の提携ネットワーク
放置自動車を処分する際、実は「目先の利益」だけを追うなら、他にも選択肢はあります。昨今の円安や輸出需要により、一部のバイヤーが日本の解体業者よりも高い買い取り価格を提示してくることもあります。
しかし、当社は決してそれに応じません。当社は全国に信頼できる解体業者のネットワークを持っており、それぞれの地域で「最も誠実な業者」とだけ提携しています。
- 東京都エリアなら、この業者様
- 大阪府エリアなら、この業者様
というように、各拠点で長年の信頼関係があり、当社の厳しいルール(「車内を勝手に開けない」「ナビなどの部品を私物化しない」等)を熟知したプロの国内業者にのみ、引き渡しを限定しています。
4. 「放置の連鎖」を断ち切る社会的責任
名義変更の法的な壁はもちろんですが、最大の理由は「放置された車を、法に基づき適正にこの世から消し去る」という私たちの使命にあります。
安易に第三者に譲渡すれば、その車が再びどこかに放置されたり、犯罪に利用されたりするリスクをゼロにはできません。そうなった時、元の土地所有者様や管理会社様が再びトラブルに巻き込まれることだけは、絶対にあってはならないのです。
最後に:私たちのスタンス
警告書に記した電話番号は、あくまで「放置問題を平和的に解決するため」の窓口です。
放置自動車は、ただの「動かないモノ」ではありません。そこには所有者の権利や、複雑な人間関係、そして時に悪意あるトラブルの種が隠れています。
それらをすべて断ち切り、土地に平穏を取り戻すこと。私たちは、目先の利益や「もったいない」という感情よりも、依頼者様の「安心」を最優先に考え、今日も現場へ向かいます。